「天国へ行けなくてもいい」
此処は、忘れるにはちょうどいい場所だ
流され、嬲られ、踏まれ、そこには何も咲いちゃいない
硝子を踏みしめる、一筋の光が私の虹彩を貫く
声が聞こえる
「私の××を返せ」
ここがハライソだと謳うなら、人間は人間なんかじゃない
私達の輪郭はあやふやになって泡沫へと消える、空に何て昇れない
そんな存在でしかないのだ、私達は生まれた原初はほぼ同じ、私達は皆透明な水でそこに多種多様な入れ物が並べられていた、ただそれだけの話
硝子の側面に、ひびが、日々が割れていく
もうすぐ、空が落ちてくる
いつか忘れてしまう
ここは、忘れるにはちょうどいい場所
忘れないで
ここは温くてまるで、まるで
まるで
私達は何も知らない、何も分からない、知ることすら許されなかった
忘れられない
此処は、忘れるにはちょうどいい場所だ
流れたことも、嬲られたことも、掛けられた言葉さえも、××られたことさえも
忘れてほしいんでしょ?
白い蛇なんて最初からいなかった
赤い果実も気の毒な話だ
蛇などいなくとも、林檎などなくとも、互いに互いを求めるのは目に見えた話だ
たったひと時の快楽を突き詰めた、その穢れを誰が背負うと思っているのか
もうすぐ空が落ちてくる
いや、地面が揺れる、いや、地面がひび割れる、いや、炎が身を包む、いや、津波が起こって、津波が起こって、そしてまた津波が起こる
きっと、また、辛いのに、苦しいのに、どうして、何で
そして、何回でも7日間はやってくる
濁流に乗って、何回でもやってくる
忘れられない
此処には何も咲かない、温かくて、冷たくて、何もない、何も咲かない
忘れてもらうにはちょうどいい、性の穢れ、汚れたハライソウ