感想「トイストーリー4」:選ばれなかった者たちの生き方

 

ネタバレあり

 

1日遅れでトイストーリー4を見てきた,予告編も何も見ずに,見に行った

一応全シリーズは見ているがそこまでストーリーに深く思い入れはない,捻くれた目線と感受性がそれに加わって,少し捻くれた,変わった感想になるがどうか最後まで見てほしい

 

今回のトイストーリー,最初に新しく加わったおもちゃはゴミでできたものだった

先割れスプーン,目玉のシール,折れたアイスの棒を粘土で貼り付けている,名前はフォーキー,ボニーが慣らし保育中に作り上げた友達

 

フォーキーは自分がゴミで作られていること,捨てられる存在であることを自覚していて,ボニーの特別であることには目もくれずゴミ箱へダイブする

「僕はおもちゃなんかじゃない,ゴーミだー!」というセリフとともに

 

対比して,おもちゃであるのにクローゼットの中で何回にもわたって選ばれない,選ばれないおもちゃになってしまったウッディー

ウッディーはおもちゃとしての役目を全うするため,ボニーが大切にしている存在であるフォーキーを献身的に世話をする

 

おもちゃの世界を通して現代社会の闇の一端を見ている感覚になった

 

この世には「選ばれる者」と「選ばれない者」がいる,当たり前の事実

世の中なぜこんなに頑張っているのに選ばれないのかと思う者に満ち溢れている

そして報われなくても,選ばれなくてもその役目に口一つ溢さず淡々と何かに取り組む者などとても少なくて,その中で選ばれなくてもその役目を全うしようとしているウッディーの姿にはピクサーの本音と建て前を感じた

 

今回のトイストーリー4,私の感想としては「選ばれなかった者たち」の生き方にフォーカスを当てた話として受け止めた

 

一人の子供に固執せずに広い世界を見るため外の世界に出たボー,一人の子供に選ばれようと棚の中で待っていた人形ギャビーギャビー,CMと飛距離が違うと捨てられたデュークカブーン,子供の純粋さにおいて選ばれなくなってしまったウッディー

 

一人一人,各々の見方があり,見ていて飽きさせない,特にギャビーギャビーに感情移入する女の子は少なくないと思う,今回私が感情移入したのはウッディーとギャビーギャビーとフォーキーだった,今回は特に感情移入したギャビーギャビーについて書いていく

 

ギャビーギャビーは自分の中の欠陥,音声テープの修復ができればハーモニーという女の子に選ばれると思っていた,その欠陥を修復できる何かが訪れるのをずっと待っていた

 

棚の中で,何もせずに,時にはハーモニーとのティータイムの練習をしながら

 

ギャビーギャビーはウッディーの音声テープを自分に縫い込み,欠陥を修復するが,ハーモニーには要らないの一言でゴミ箱へ捨てられてしまう

 

音声テープを返すというギャビーギャビーに向かって

 

「棚の中で待っているわけにはいかないだろう」と手を伸ばすウッディー,何気ないセリフだがとてもグッときた,待っているだけの人間が,この世にはとても多くいて,それはいいことではないと改めて気づかされた

 

そしてギャビーギャビーは帰路の途中で迷子の子供を見つける,ウッディー一同を引き留めて,その迷子に寄り添ってあげたいと申し出る

 

最初ギャビーギャビーは悪い立ち回りをしていたが,心の中では子供に寄り添いたいというおもちゃとしてのプライドを持った人形だった

 

その心の元,また捨てられるのではないか,上手くやれないのではないかという不安に立ち向かい,迷子の子供の元へ行く,子供に抱きしめられ,安らいだ顔をするギャビーギャビー

自分から行動することはこの上なく怖い,でも動かなければ何も始まらないという当たり前なことを暗に改めて突き付けられた

 

そしてラスト,ボニーが新たに友達を作って帰ってくる,フォーキーと同じように,ごみで新たな友達を作る

「私,ゴミ?」

「ゴミじゃないよ,おもちゃだよ」

本来ならば捨てられるだけのゴミが,選ばれる存在へと変わる

「私,なんで生きてるの?」

「さぁ,何でだろうね」

物語は終わる,生きる意味なんて考えない方が案外楽に生きられるのかもしれない

本来ならば捨てられるだけだった存在が,選ばれる側へと変わる,それは偶然にすぎないのかもしれないけれど,この世はそんな可能性を秘めている

そして,選ばれなかった者にも切り開けば違う未来が,自分が活きる未来が顔をのぞかせる

そんなことを感じさせる映画

一度でも何かに選ばれなかった人,現に選ばれる選ばれないの間で揺れ動く演劇部の人に見てもらいたい作品のひとつでした。

どう足掻いても♀

百合の花が咲き乱れていて,貴方はそれを唯々むさぼるように汚らわしく口にねじ込んでいた,とても汚くて,とても醜くかったのに,なぜか私の虹彩は貴方という存在を網膜上の認識から外せなかった,貴方が吐く硝煙,ブラックストーンの眉をしかめたくなるほどの甘ったるい包まれて,私は思わず淡いピンクのリップを塗ってしまった。

 

プレゼントのリボンはほどかれなくてはならないと誰かが言っていたように私達もいずれは血を流さなければならない時が来る,シャトーマルゴーのような黒に近い赤が,私を私タラ占めるものだと改めて認知させる,下に絡めたキャラメリゼははいつまでも舌の根に残っていてあなたと私を繋ぐ唯一の架け橋が,互いの口元構築される,それも一瞬の出来事に過ぎない,一瞬,一瞬だけだよ,一瞬,肌と粘膜の接触,ただそれだけ,網膜の認識も,一瞬だけ,触り触られ,ただただ互いの独りよがりな快楽を貪るだけの…,あぁ…,ほら,ねえ,耳を澄まして,聞こえるよ,もうすぐ…,獣じみた不協和音のオペラが聞こえるよ。

 

月面から泣きはらしたかのような真っ赤な瞳をしたウサギが一羽,私たちの行為を見つめている。

 

目の前の相手が愛おしいのか殺したいのか分からなくなるまでに混ざり合って,もうどちらが私で,貴方が私で君が貴方でお前が貴方で私はお前で…

 

貴方が,百合を貪る貴方が,ウサギのような瞳をしているのが悪い。

 

白い身体に桜をちりばめてもいずれは散ってしまう,貴方はまたそのウサギみたいな目で人を魅了させ,服の下に隠されたリボンをたやすく解いていく,いいの,それでいいの

だって私さえ気持ちよくなればそれでいいから!

だから,ねえ,もっと,もっと深く,もっと酷くしてよ,今まで傷ついてきた分,何も考えられなくなるほどに,この世界に貴方と私しかいないんだって錯覚させて。

 

コーヒーを零した真っ暗な夜に,ガムシロップとミルクが混ざり合っていく

くだらない行為,生産性なんてない,でも,貴方が私につけてくれた,むせ返るほどの硝煙の匂いだってどうせそんなもんだと,月面か見ていたウサギも瞳にしわを作りながら笑っている。

 

あざ笑う?気持ち悪い?独りよがり?それじゃあ何のため?ある見えない規定に定められた常識のため?確証もない未来のため?私に似た誰かを作り上げるため?

 

あるいは私が正常であったことを声高々に証明したいだけ?飽和して消えていく下らないシュピレヒコール,と,かすかに聞こえるドロドロに溶かしたチョコレートのような,甘ったるい声にならない声,本能の欠如

いいえ,これが人間そのものよ

森の奥,月の下,百合畑の中で,私達は,私達である所以を求めている。

G線上のアリア,なぞる指先

五線譜の上に散りばめられた硝子の上を私は今日も一歩一歩踏みしめながら歩いていく,裸足で歩いていると存外人間は砂糖菓子のように脆い存在なのだな,などと哲学的なことを考える,硝子は踏みしめるたびパキパキと音を立て降り積もる雪のように煌めいて,それこそ砂糖菓子のようだった,鋭利に尖った破片の一片,小さな素足からしとどに流れ出る血液,赤と白,混ざり合って,どちらのものでもなくなって,恋の色,まるであの時みたいじゃない?五線譜を爪先でなぞっても,貴方からの返事は返ってこない

「キミはただ,抱きしめられたかっただけなのにね」

シーツの中で貴方は諭すように淡々とつぶやく,私には,ロミオが飲み干した劇薬のような即効性のある鳥の一声,違う,私は貴方の全てを愛している,口も目も耳も花も頭のてっぺんから爪先まで,F分の1の揺らぎの成分が含まれた,だれもを魅了するその声も,伏し目がちに笑った時に出る目元の皴も,その衰えた身体に包まれる,節くれだった指先が織りなす亜麻色の乙女,月光,カムパネルラ,鉄盤に触れる私の手の甲に,貴方の掌が重なって,白と黒,我慢もできずに深い闇夜に落ちていく,アダムが飲み下したリンゴの破片を思わせるようなのどぼとけが上下する動きを

私はじっと,見つめている

「キミはただ,抱きしめられたかっただけなのにね」

それでも,貴方が拒否できないことを私は知っているから,貴方ののどぼとけにたたずんだ林檎の欠片を凝視する,間抜けな,声にならないへたくそな歌声が,今日も響いている,貴方だって,私に爪先でなぞられて,絆されちゃっただけなのにね

五線譜に血液と精液が飛び散って,白と黒,林檎,下手くそな歌声,フォークソング

一連の行為で溶かされた思考の中で,ふと,キミが弾くG線上のアリアは君自身を表しているねと言われたことを思い出す,揺さぶられる意識の中で勝手に唇から零れ落ちる,貴方はまた目を伏せて笑う,逃げられないくせに,間違いだと,正常な人間のまま逸脱した行為を繰り返す

「ねえ」

言葉を返す,伏し目がちに,紅い唇が弧を描く

「私たちが間違っているなら,世界はもっと間違っているわ」

深淵

拝啓神様

私,結局辛いんです,愛する人が出来ても,私,とても辛いんです,大都会の雑踏がいつまでも頭の中を反響しているみたいで,うるさくて煩わしくて,頭を切り離したくなる,右手のケロイドが死ぬことは痛いのだと,死にたくても死ねなかったくせにと,あの時生き残って彼と出会えた軌跡は一体どこへ行くのだと,私に泣き叫ぶのが聞こえて,頭の中を反響している雑踏が,足音や話し声喧騒がその瞬間,ピタリ,とやむんです,頭を,切り離すのをやめる,神様,これは依存ですか?

 

拝啓神様

私の因果は何?私は何でそう思うようになった?因果のタネは?それを蒔いたのは?犇めき合う思考のざわめきと割れて使い物にならないワイングラス,そしてスワロフスキーのブレスレット,骸骨が死んでしまえと囁いているんです,それが誰かは分からないんですけど,きっと自分なんでしょうけど,囁いているんです,愛する人が出来ても結局何も変わらなかった,自分は変われなかった,これは私自身が囁いている,骸骨の私と生身の私が交互に死ねと囁くのです,どうにかして止めてもらえませんか

 

拝啓神様

私は普通の家庭に生まれたかったんです,でも普通の家庭に生まれていたら確実に今愛する人にに出会えなかったんです,私,普通の家庭に生まれたかったと何百回も思うのに,そのたった一つの理由だけで,私の子と願い何て取り消せてしまうんです,それでも,普通の家庭で,私がまともで彼に出会えていたらどんなに素敵だったかと思うのです,それでも,でもだけどだっての繰り返しでしょうもない人生でしかないけど,私この人生を歩んだから彼と波長が合うのだと思うんです

 

拝啓神様

でも私,結局辛いんです,結局私貴方のことが大好きで大嫌いなんです,私をこんな風にした,させてくれた,貴方が大好きで大嫌いなんです

 

拝啓神様

私これだけ貴方に不満を述べて死にたい死にたいと打ち込んでも,結局は今愛してる人と幸せになりたいんです,愛する人と一般的で普通の幸せをかみしめてる時間を狂おしいほど私は望んでいた,私は今幸せの最中にいながらも苦しくて苦しくてたまらない,だから,どうか,お願い,今苦しくてもいいから,今愛してる人と永遠に幸せにさせてもらう権利を,私にください

sea

カチカチ,価値,私は薄汚れた海の底文字以外の価値を見つけてしまった

 

減る数値,やせ細る四肢,ディオールの香水,黒いドレス,シャンパン,Rエリカ,打ち込む言葉,そして言葉のチューイング

 

海で溺れている,それは汚れた海,水面に漂うガラスの瓶に血が付着していたり,割れていたり

 

そう,私は海の中で文字を書いていた,カキカキカキ,下記,汚れた海の中で一体何が起きているのか「help」のその一言,割れている瓶の中から文字が流れ出て,揺蕩う,「help」たった一言のその文字はどこへも辿り着かず,藻屑となって消えていく

泡沫が眩しくて目を細める,私の口から発する泡までもが水面に出ていくというのに,私は海底にとどまったまま,誰かの助けを待っていた,その中で「help」以外の文字を書いてみようと思った

 

カキカキカキ,寂しさ,美しさ,悲劇,トランジェスタ,その中に潜む美しさを存分に引き出せていた,そして,私はその美しい文字たちを泡に乗せていた,とても心地が良かった,それでも,結局はとても辛かった,言葉を紡ぎだすたびに,寂しくなった,悲しくなった,汚れた海に光が差し込んだ,私は人魚姫になっていた,急いでドレスを破り捨て,貝殻を投げ捨ててその光に向かって泳いだ,泳いだ,泳いだ,私に差し伸べる手が,見えたから

 

海が好きだ,私は海で彼にすべてを打ち明けた,私は泣いていた,彼も泣いていた,カチカチカチ,私はもう文字を書かなければならないような理由がなくなった,カチカチカチ,価値,それでも,引き寄せられるように指がピアノを弾くかのように動くようなものだから。

今でも覚えている,この人のお嫁さんはたいそう幸せだろうと,まだ銀色の幸せが彼の薬指に,まるで鎖のように付いていた頃から,私はそう思ってしまっていた。

 

縁,としかいいようがない,私の母親は覚醒剤取締法違反で福島拘置支所に3年服役していた,当てつけのつもりだった,色んな理由や言い訳をかき集め,私をおろそかにした,そしてそれを忘れた母への復讐のつもりだった,三世代に前科者がいると保安関係の職に就けないという噂もあったので母に責任者の署名は頼まなかった

 

明くる日の朝,今でもその時の朝,熱さ,眩しさ,緊張感を覚えている

 

あの日,カーテンから覗く光は,私を導いた,そして捕らわれた。

 

prisnon

 

とても上品で,似合っていると思った,彼はその時から離婚調停中だったというが,銀色の指輪の輝きは文字では表せないほどに美しかった,誘われた,充てられた,今思えば特別な感情を覚えていた,それは例えば,そう,私は一時期シェルターで過ごしていた,そこには頼れるお兄ちゃん的存在がいて,彼はそんな存在だった。

 

私は人の目を見てしゃべるのが苦手だった,特に男性,男性がとても嫌いだった。

 

顔しか見ていない,力に頼ればいいと思っている,女より有利だと思っている,思ったことをすぐ口に出す,性的なことしか考えていない,そんな状態でも強いのは男だ。

 

彼と二人きりで話す機会,その一度目,彼とすんなり目を見て話せたのが印象的だった,彼は仕事で忙しい中,どんな部署なのか,その他の部署がどんな役回りなのか教えてくれた,伏し目がちで,それでいてまっすぐと私を見てくれる彼の瞳はとても澄んでいて,そしてどこか寂しげだった,その寂しさが何かはその時は分からなかった。

 

しかし,でも,きっと,私も同じ寂しげな双眸で彼を引き寄せたのだろう,彼は,私と彼自身,似ている部分があると思ったらしい,表情の動き,眼差し,話し方から,彼は私のほんの少しを知っていた,最初から。

私のことを何一つ知らない友人も多くいる,その中でだ。

 

私の話をしようとなるととても長くなるので直接聞いてほしい,それはその日を無駄に費やすことになるが,この世界が仮に舞台なのだとしたら,私が今まで書いてきた脚本の中で私はそう,一番の悲劇のヒロインだと今は言い切れる。

 

愛,寂しかった,だれでもいいから愛してほしかった,私そのものを愛してほしかった,性別を超えて好きになった人がいた,センシティブで,正にそれが極上の愛だと思っている傍らで,SEXができるかどうかが恋愛の大きなカギになるという感覚が,自分の中で矛盾していることは分かりながらも抱え込んでいた,彼女はとても素敵な人だった,自分の意志を持って,強かでそこか陰のある女性だった,支えてあげたかった,でももう,今愛しているのは別の人だ。

 

15歳という歳の差は大概の人はネックに感じるだろうが,私からすれば刺激に欠けない素敵な日々を送らせてもらえている,ネックなことなど何もない,恋愛に年齢など関係ない,問題はその時に考えればいい,異論何て認めない。

私は交際歴がない,この人で終わりにしようと思っている,数日前友人に分かれることを勧められた,恋愛の経験を積んでから結婚に臨めと言われた,私は言葉に詰まった,恋愛にそんなもの関係ない,愛している,心から愛している,足りない部分は補えばいい,けんかになったら話し合えばいい,合わない部分は妥協するか話し合えばいい

 

歳の差が何だというのだろうか,経験が何を物言うのだろうか

彼が私を置いて先に旅立とうが,彼がよぼよぼになろうがぶくぶくに太ろうが彼が今の職をやめようが心の病気になろうが私が支える立場になろうが私は彼を愛している。

私は彼の容姿も含め,第一に人格に惚れたから,彼の指輪が外れた時から,運命だと思っていた,優しさに触れた,薄汚れたガラスを彼が拭いて,一緒にいろんな絵の具を塗った,それを忘れはしない,忘れたくない,愛している,ずっとこの先も一緒にいたい,15歳差,私に交際歴無し,心の病気持ち,家庭不和,私はリスキーな立場に立とうが彼とこの先の人生を一緒に歩きたい,結婚したい,だから結婚したい,それ以上に,何の理由が必要なのだろうか

宇宙の子供たち

大好きなアーティストの曲に「月へ行くつもりじゃなかった」という歌があります、灯油のにおいが立ち込める陰鬱な部屋でこの曲を延々と聞いてたあの頃を思い出しました。

 

自分は脚本を幹として枝分かれに演出、メイク、広告美術とやってきましたが、やっぱり人様の芝居を見てて一番目が行ってしまうのってやっぱり脚本なんですよね、でも今回は創作ではなく既成での上演ということで、脚本の部分にはノータッチで進めていこうと思います

まず、このご時世にものすごくタイムリーな子供の虐待死がテーマの作品、以前私の記事でも取り上げましたが結愛ちゃんのニュースが風化しかけている今、舞台、光の席、音の席、そして袖幕で彼らを見守る一人ひとり、どんな感情を持って虐待というテーマに望んでいるんだろうとただ、今は漠然と考えています

 

幕が上がる

仲良さげな家族、地に這う根が虐待なら枝が星に当たると思う、このシーンから読み取れるのは、まず前提として「成り立っている家族」服装も、後々に比べるとピシッとしていて、夏の大三角形を語るお父さん役の子には大黒柱としての安心感を身に纏わせている、母親役の子も同じく、包容力のある、優しい母親の姿が凄く様になっていた

星、きらきらと、別の言い方をすればちかちかと光る星

私の独自な解釈でしかなく、私は劇の序盤はあんまり理解できないことのほうが多いので見当違いなことを言ってるとしたら恥ずかしいのだが、首元に両手をかざす→首絞め?という考察

脳に酸素がいきわたらなくなり視界がちかちかしているさまを、星の見えない孤独な二人ぼっちの夜に繰り返していたのではないか、親に教えてもらったとかではなく、親に教えてもらったことにした自分たちが進んでやった道楽として、序盤このシーン、理想の話なのか現実の話なのか、はたまた混合した話なのか初見の私にはあまり追及できないところではある

 

そういえば、私座席の後ろのほうのほぼ真ん中に座ってたんですけど、あの星を見る長い筒(名前忘れた)の舞台の中央斜め45度のその絶妙な角度からして「見つけた!あれがボクたちの星だ!」ってそれ多分私の顔面ですね、ケンジくんとタダシくん、服装も顔も体系もしぐさも子供のそれで、実力という物を突き詰めてきてるなぁと感じました、楽しい時には楽しいオーラを体いっぱいで表現し、悲しい時、暗い感情の時は私達の心臓を持っていこうと手探ってくる彼女たちの演技は本当に素晴らしかったです

複数回見ている人にとってはこのシーンがいつまでも続けばいいと思われるくらいに向くな子供の姿がそこにはありました

さてここで登場するのがロクスケおじさんとお姉さん、この二人のキャラもまぁ非常に素晴らしい、会場を一つ一つの所作で笑いに引きずり込むロクスケとそれを後押しするお姉さん、ていうかお姉さんの活舌が非常によろしい、そんな頼れるロクスケおじさんのもとには沢山の子供たちからの沢山の電話が来ます、そんな頼れるロクスケおじさん、タダシとケンジの質問にも何も迷いもせず答えてしまう!ええ!すごーい!

頼れる!天才!

 

宇宙、二人が望む星へ、高度が上がり、明かりがどんどん暗いブルーになっていく

二人を包む柔らかい光がコックピットとなり、周りは一層ブルー一色になり、後ろの大黒幕も一気に開く、二人の世界が開かれるのだ

 

でも、考えてみれば、私達はもうとっくに気付いているんです、宇宙になんか行けないって

ましてや、誰しも飛行機とかに見立てた遊具でパイロット役を務めたことがあったであろうが、その飛行機を模した鉄屑がエンジンを一吹きでもしたことがあったか?無いだろう、二人の孤独な現実からの逃避行に過ぎないことは私達は考えれば分かることなのだ、隣から聞こえる大声もドタバタと煩い物音も耳をつんざく泣き声もまた同じく

 

でも大丈夫!頼れるロクスケおじさんとお姉さんがついている!と思ったら間違えて月面着陸してしまった、確か(うろおぼえですごめんなさい)

 

私のいわゆるツボの話なのですが、舞台にあまり関係ない、書いては失礼だがモブたちが大勢出てきて踊ったり叫んだり何かしらのパフォーマンスをするのが個人的にすごく大好きです、このシーンは凄く燃えました、あとBGMのチョイスも凄く素敵

 

そしておばさんうさぎたちの会話で一気に引き戻される、上手く文字で表せないのがもどかしいが、逃避先で別の生き物として当てはめた身近な生き物がひそひそ話てるのを私達が聞いて、二人が置かれてる状況を把握するって、私達もおばさんうさぎになったような感覚になってすごくドキドキしました、私達も、黙認している一人なのです、羽織を羽織って出てきたかぐや姫もTHEお局って感じでしたね

 

そしてもう一度コックピットへ戻って二人の星へ目指そうとするが何故か遠のいている!!何で何でと二人は騒ぐがもう私たちにはなぜ届かないのか薄々じゃなくともわかっているんです、そして小惑星の軍団に出くわしてロクスケおじさんたちとの回線が切れてしまう、ロクスケとの通信はタダシの心がベースでリンクしているからか、乱れると回線まで乱れてしまうのだ!雲行きが怪しくなる

 

場面は体育の授業、これまた面白かった

何かを失敗したり口答えすると殴りかかる女教師

「なわけないじゃーん!」の一言はこの物語の主軸となるキーワードに感じてならない

これでいくらでも否定できる、その行いをした自分を肯定できる、冗談だ、自分は悪くない

体罰?なわけないじゃーん」「いじめ?なわけないじゃーん」「虐待?なわけないじゃーん」

そして「なわけないじゃーん」と言って危害を加えない女教師と後々の展開も凄く比較的だ

生徒がボールを持ちながら二人を取り囲む、小惑星の集団、これは素直に発想と演出すげえと思った、現実と逃避の狭間ということは抜きにして、教師や生徒が癒えに来て学校来てよとか抜かすのは子供にとっての重大なストレスである、ましてや臭いとか抜かしてたやつとかならなおさら、全員胎児からやり直して一昨日来いって話なわけです

 

そして、家庭のシーン、だったような気がする

このシーンは凄い、やっぱり脚本自体を褒めてしまうのだが、兄弟でえげつないレベルの対応の差はやはり心に来るものがある、二人ともいたいけな子供なのだ、弟も兄の皿にカレーが乗ってると信じたいのだ、空の皿をむしゃむしゃと食べる(?)母親の姿、うつむきながらカレーを頬張る姿はリアリティーがありすぎて直視できなかった、泣き叫ぶタダシの声が響く、お母さん悪くないもんねと子供に問いかける原初的な毒親の姿は身体が震えた、母は統合失調症なのでしょうか?

そして小汚い恰好をした父親が万引きした本を手土産に帰ってくる、そしてタダシはそれに反論する、やっちゃだめなことを絶対的な親がしているという悲しい現実に立ち向かおうとしているタダシ、ついには星を見るアレにまで手を出そうとする父親、反抗するタダシ、それでも大人にはかなわない、更には金持ってんだろと乱暴される始末、虐待はリンクする、タダシの母親も昔そうだったと劇中では軽く触れられていましたがこれは重い事実です、そして出ていく二人とテーブルに潜る二人(幕裏で二人の喧嘩が続いてるような声と音を出すと臨場感あふれていいかなと思ったんですがいかがでしょうか)場面がリアルすぎて泡吹いて倒れるかと思いました

 

そして、死の瞬間、あれはもう凄かったですね

ここで私の話をするのはどうかと思いますが昨年の大会で我が校も虐待をテーマに芝居をしたんですね、そこでどれだけリアルを追求できるかで髪の毛引っ張って引きずり回したり実際に蹴とばしたりしたんですが、結局、されたことも無い人がやるには只の真似事にすぎなく(言い方が悪くなりましたがこれはこれで私達にしかできない最高のパフォーマンスだと自負してます)意図的に隠されたものを表現するにあたってあの身体表現は凄くイイなと思いました、父と母の暴力、クラスメイトからの暴言、何もできない、立ち向かう力など揃えられていない幼気な少年二人、タダシの手からビームなんて出ない、出るわけがない、助けたい、でも出ない、助けられない、兄ちゃん…の声で暗転、悲しいけれども分かってしまう

 

その日のロクスケおじさん相談局にはいつもと同じく沢山の手紙が届く、でも内容は簡略化すれば死にたいといったようなものばかり、過大な表現ではなく、これはありのままの事実です、そういやお母さんが暴れた段階で、ロクスケおじさんにもう一度電話をかけたとき、周りにお父さんやお母さん、相談できる人いる?先生でもいいよ、のセリフがとても心苦しかったです、誰も頼りにできなかった二人の唯一のヒーロー、誰にも助けてもらえない、繰り返される暴力の中で何を思ってたのかが、暗転後の二人の会話に詰まっていると思います

 

安住できる僕たちの星が欲しかった

 

暖かな家庭、遅すぎた、あるはずのない暖かな家庭、ホリに映し出される星たちは、彼らがまだ地球にいることを意味しているのだと思う、お父さんはちゃんとした服を着ている、母は全員分の料理を作り、子供たちに優しく微笑みかける、宇宙に行かなければ存在しないものだと思ってたタダシとケンジ、彼らが欲しかったのは星なんかじゃない、ただの温かい普通の家庭だ、家族四人寄り添って星を見るシーンで、思わず涙を流してしまった

 

全体的に完成された芝居だと思いました、私から言えることと言えばゆっくり休む時間を作ってほしいということくらいです、これからの時期、きっと追い込まれるのではないかと思います、そんな中で本番長野の地で後悔の残らないよう、今ではなくともしっかり休養を取ってほしいように感じます