深淵

拝啓神様

私,結局辛いんです,愛する人が出来ても,私,とても辛いんです,大都会の雑踏がいつまでも頭の中を反響しているみたいで,うるさくて煩わしくて,頭を切り離したくなる,右手のケロイドが死ぬことは痛いのだと,死にたくても死ねなかったくせにと,あの時生き残って彼と出会えた軌跡は一体どこへ行くのだと,私に泣き叫ぶのが聞こえて,頭の中を反響している雑踏が,足音や話し声喧騒がその瞬間,ピタリ,とやむんです,頭を,切り離すのをやめる,神様,これは依存ですか?

 

拝啓神様

私の因果は何?私は何でそう思うようになった?因果のタネは?それを蒔いたのは?犇めき合う思考のざわめきと割れて使い物にならないワイングラス,そしてスワロフスキーのブレスレット,骸骨が死んでしまえと囁いているんです,それが誰かは分からないんですけど,きっと自分なんでしょうけど,囁いているんです,愛する人が出来ても結局何も変わらなかった,自分は変われなかった,これは私自身が囁いている,骸骨の私と生身の私が交互に死ねと囁くのです,どうにかして止めてもらえませんか

 

拝啓神様

私は普通の家庭に生まれたかったんです,でも普通の家庭に生まれていたら確実に今愛する人にに出会えなかったんです,私,普通の家庭に生まれたかったと何百回も思うのに,そのたった一つの理由だけで,私の子と願い何て取り消せてしまうんです,それでも,普通の家庭で,私がまともで彼に出会えていたらどんなに素敵だったかと思うのです,それでも,でもだけどだっての繰り返しでしょうもない人生でしかないけど,私この人生を歩んだから彼と波長が合うのだと思うんです

 

拝啓神様

でも私,結局辛いんです,結局私貴方のことが大好きで大嫌いなんです,私をこんな風にした,させてくれた,貴方が大好きで大嫌いなんです

 

拝啓神様

私これだけ貴方に不満を述べて死にたい死にたいと打ち込んでも,結局は今愛してる人と幸せになりたいんです,愛する人と一般的で普通の幸せをかみしめてる時間を狂おしいほど私は望んでいた,私は今幸せの最中にいながらも苦しくて苦しくてたまらない,だから,どうか,お願い,今苦しくてもいいから,今愛してる人と永遠に幸せにさせてもらう権利を,私にください